子どもの暴力・暴言をどのように捉えたら良いですか?

子どもの場合、ふざけや遊びが高じて暴力や暴言になるなど、どこからが暴力なのか、暴力・暴言の基準、その判断が難しいものです。そのため、スタッフ間の対応にも違いが生じやすく、異なる対応に混乱する子どもも少なくありません。

児童・思春期精神科看護における暴言・暴力とは

児童・思春期精神科看護における暴力・暴言とは、「その行為・行動を行えば、相手や物を身体的、心理的に傷つけるとわかっているにもかかわらず、傷つけられることを望んでいない相手(物)に対して損傷を与える行為であり、行為を受けた者に恐怖や威圧、不快などの苦痛を感じさせる行為」を指します。

暴言・暴力を引き起こす要因

1.子ども側の要因

  1. 障害(疾患)の影響
    統合失調症圏にみられる幻覚や妄想状態や、広汎性発達障害で状況理解や相手の意図が読み取れない場合、被害的に捉えて暴力で返してしまうことがあります。
    ADHDや行為障害児は、衝動性が高く情動コントロールができにくいため、些細なことに反応し暴力に至ってしまいます。これらの子どもは、多動や衝動性、不注意などから叱責されることが多く、二次的障害となって自暴自棄的な行動を取る場合があります。
  2. 養育環境の影響
    暴力のある家庭で育った場合、暴力を振るう親の思考や行動のパターンを取り入れ、暴力が当たり前になってしまうことがあります。被虐待児は、卑小感や劣等感を持つが、それを補うために強い者と自分を同一視させ、暴力を振るうことがあります。
  3. 経験不足・学習不足による問題
    暴力や暴言を振るいやすい子どもは、叱責されることが多く自己肯定感を持ちにくい特徴があります。そのため、他者の受け入れを気にし、相手を試すために暴力を振るうことがあります。自分の気持ちをうまく表出できないため、暴力として表出してしまいます。

2.病棟の環境要因

  1. 物理的環境の問題
    閉鎖病棟で自由に外に出られない、大部屋でプライバシーが確保できにくいなどの環境がストレスとなり、暴言につながる場合があります。
  2. 病棟規則・治療プログラムとの兼ね合い
    病棟には、病棟規則や日課が設けられているが、行動が統制されるため反抗の対象となりやすい。高すぎる治療目標が、暴力・暴言を生み出すこともあります。
  3. 他児からの刺激
    衝動性・易刺激性の高い子どもが集まる病棟は、ざわつき、落ち着かない環境になることもあります。また、過干渉・パーソナルスペースへの侵入など容易に境界を越えて接近してくるため、怒りを誘発しやすくなります。

3.スタッフ側の要因

攻撃は、スタッフの指示が引き金になっていることも多いとの報告もあり、患者とスタッフ間のコミュニケーションの問題が原因になることもあります。

暴言・暴力を判断するために必要なアセスメントの視点

子どもの行動化の背景には必ずメッセージ性があるといわれています。そのため、暴力・暴言といった行為のみを取り上げるのではなく、暴力に至った背景から理解していくことが必要です。

1.暴言・暴力に至る状況、ダイナミズムに着目する

攻撃対象となった子どもやスタッフとのやり取りなど、暴力・暴言に至った状況に着目します。直接、行動化に関与していなくても、傍観していた子どもやスタッフの態度が、興奮を助長する場合もあるので、周りの子どもの状況にも着目しましょう。
普段と異なる表情や言動、易刺激性の亢進、気分高揚、他者に対する過干渉や試し行為の増加などサインを示す段階で介入すると暴力に至らずにすむ場合もあるので、こうしたサインに気づくことが大切です。

2.治療環境との関連

日課や治療プログラムとの関連から、「どのような場面で暴力や暴言になりやすいのか?」に着目して観察することが必要となります。
「入院後どのぐらい経つのか?」、「課題として提示されていることはないか?」など、治療の進捗状況に着目して子どもが何にストレスを感じているのかをアセスメントしていきます。また、「病棟の子ども集団の中でどんな存在か?」といった対人関係にも着目して観察していきます。

3.個人特性(疾患や養育環境の影響)

怒りっぽさ、落ち着きのなさ、集中困難、危険な行為・反社会的な行動への憧れはないか、理解力・IQはどのぐらいか、自己主張できるか、などに着目してアセスメントします。
 養育環境の問題として、親子の関わりはどんなだったか?家庭内に不和はなかったか? 家族の健康状態や経済状況は良好か?などに着目してアセスメントしていきます。

さいごに

児童・思春期精神科病棟に入院してくる子どもは、自分の思いを言葉でうまく表現できない場合も多いものです。こうした子どもを理解するためには、日常との違いに気づくなどの看護師の細かな観察や、子どもが思いを伝えやすいような関係性を日頃から作っておくことが大切です。

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