子どもと良好な関係性を構築するためにはどうすれば良いですか?

児童・思春期精神科看護では、子どもとの信頼関係ができてはじめて、本当の看護が始まります。患者・看護師関係はケアの基盤であり、看護師の最初の目的は、子どもや親と治療同盟を確立することです。子どもとの間に信頼関係がなければ、子どもの抱える本質的な問題に迫り、その問題解決のために子どもと一緒に取り組むことはできません。

患者・看護師関係とアタッチメントの形成

児童・思春期精神科に入院している子どもは、親とのアタッチメント関係が不安定であることが少なくありません。そのため、子どもの精神科における治療者の役割は、親子関係が葛藤で傷ついた状態から回復するまでの間、親にかわる青年のアタッチメント対象となることです。
子どものアタッチメント対象となることは、他の職種と比べて子どもの入院生活の一部始終に関わることができ、子どもにとって最も身近な存在である看護師にこそ求められる役割といえます。アタッチメントを形成するということは、看護師と子どもが相互に愛着を深め合うことを意味します。看護師との安定した関わりは、子どもに安心感と自信をもたらし、これまでの不適切な対人パターンを修正することができます。そして、子どもは、他者と豊かな人間関係の築き方を学び、新しい人との関わりを広げていくのです。

子どもとの心的距離と自己洞察

児童・思春期精神科看護では、患者・看護師関係が子ども対大人という関係となるため、看護師と子どもがお互いに親子関係を疑似体験しやすく、治療的関係が不安定な状況がうまれやすいという特徴があります。そのため、子どもと適切な心的距離を保つために、以下のような方法を用いて、自分に対する子どもの言動と子どもに対する自分自身の気持ちの2つの変化を客観的に評価すると良いでしょう。

  1. 入院している子どもをチーム全体でケアしていくという視点をもつ
  2. 看護師の自分の親への感情、自分の子どもとの関係(子どもがいる場合)、看護師のもつ価値観など、看護師の内面まで洞察を深める
  3. 子どもとの関わりの中で、気になったことや自分の感情などについて、親しい同僚に話したり、管理者からスーパーバイズを受ける
  4. 病棟のスタッフや管理者は、看護師と子どもの関係性を観察し、必要な時は間に入って調整する

患者・看護師関係の発展に影響を与える子どもの要因

患者・看護師関係の発展に影響を与える子どもの要因は様々ですが、看護師は、特に子どもの発達段階、性格、疾患、家族背景などを考えながら関係づくりをしていく必要があります。一般的に、大人への移行期にある思春期の子どもとの関係性の構築は、学童期よりも難しいものです。看護師には、根気強く、どんな行動をとっても壊れずに見守っていく姿勢が必要になります。
家庭での親との関係性や養育環境もまた、患者・看護師関係の発展に影響する要因です。例えば、被虐待児の場合は、他者と安定した情緒的な関係性を構築することが難しく、看護師はどのように関わっていけば良いかに悩みます。しかし、甘えや依存が受け入れられ、常に関心が得られるような看護師との治療的な関係性こそが、被虐待児が、人への信頼感を回復していくために、求められているのです。

子どもとの良好な関係を構築するための関わりのポイント

ペプロウの対人関係理論に沿って、子どもとの良好な関係を構築するための関わりのポイントをまとめました。

方向付けの局面
(問題の明確化の局面)
  • 子どもに自分が担当看護師であることを伝える
  • 子どもが安心できる環境を提供する
  • 「いつでも見ているよ。」というメッセージをおくる
  • 子どもと一緒になって遊んだり、スポーツをする
同一化の局面
(患者が看護師から専門的援助を受ける局面)
  • 一対一で関わる時間をできるだけたくさんとる
  • 子どもと楽しさを共有する
  • 子どものあらゆる行為を心の叫びとして受け入れる
  • 子どもにとって担当看護師が特別な存在になる時期であることを踏まえて、心的距離の取り方に注意をはらう
開拓利用の局面
(患者が自立に向けて専門的援助を選択する局面)
  • 集団活動への参加や他の子どもやスタッフとの関わりを促し、対人関係の拡大をはかる
  • 問題が起こっていない時に、意識的に関わる
  • 一貫した態度、リラックスした態度で関わる
  • 自分の感情や意見を率直に表し子どもと向き合う
問題解決の局面
(専門的関係の終結の局面)
  • 離れてもつながっているという感覚をもてるようにする
  • 退院によって子どもが喪失感を感じないように配慮する
  • 別れが次のステップへの動機付けになるようにもっていく
  • 一緒に乗り越えたという思い出を大切にする。
  • 同じ時を共有できたことを肯定的に感じてもらう
  • 次の出会いにつなぐ(退院したことで、新しい次の出会いが訪れるようにしておく)
  • 子どものペースに合わせて徐々に関係を終結させていく

 

子どもとの良好な関係性の構築を助ける看護体制

担当看護師は、子どもの生活において最も身近な存在です。入院してきた子どもは、まずは担当看護師と関係性を築くことになります。そのため、担当看護師が、自分でなんとか問題を解決しようと抱え込んでしまったり、上手く対応できずに負担を感じてしまうことも少なくありません。プライマリナーシングと小グループのチームナーシングを合わせた看護体制(プライマリ・ナーシングチーム)など、担当看護師を孤立させず、スタッフみんなで支えていく体制を作ることが必要です。

用語解説

  • アタッチメント:
    アタッチメントとは、ボウルビィ(Bowlby, J.)によると「危機的な状況に際して、あるいは潜在的な危機に備えて、特定の対象との接近を求め、またこれを維持しようとする個体(人間やその他の動物)の傾性」と定義されている。ボウルビィ(Bowlby, J.)は、子どもが主なアタッチメント対象との間で経験した相互作用が内在化することにより、自分と他者についての内的表像としての作業モデル、すなわち内的作業モデルと呼ばれるものが形成されるとした。内的作業モデルは、対人関係の手続き記憶によって他者の行動を予測し、それに応じて自らの行動を無意識的に計画していく機能を持つと考えられている。しかし、近年、内的作業モデルは、心的外傷となるような人生上の大きな出来事や、信頼できる人との出会いなどによって、青年期以降にも変化する可能性が示唆されている。親へのアタッチメントが子どもにとってその後のすべての対人関係のひな型になるものでは必ずしもないこと、保育士や教師との関係が親へのアタッチメントとはかなり独立的に構成されることが明らかとなってきた。現在、内的作業モデルは、複数のアタッチメント対象との関係から影響を受けつつ形成され、変化していく可能性をもったものであると考えられている。
  • 自己洞察:
  • ペプロウの人間関係理論:
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