暴力・暴言を受けた時に、どのように自分の感情をコントロールしますか?

暴力は未然に防ぐことが何より重要ですが、もしも暴力に遭遇してしまった場合には、組織内でふりかえりを行い、子どもの背景を理解することが看護師の気持ちのコントロールに有効であるといえます。また、看護師自身がアンガーマネジメント怒りをコントロールすることにより、感情を落ち着かせるとともに、怒りとともに生じる生理的反応を低減する手法。マインドフルネス仏教瞑想の心と呼ばれている。自分の内なる声、心の声を聞き、呼吸に耳を傾ける瞑想である。を身につけることも気持ちのコントロールをしやすくするでしょう。

保健医療機関における暴力

医療機関における暴力・暴言の発生は少ないものではなく、中でも看護師は医療スタッフの中で暴力・暴言を受けやすい職種です。児童・思春期病棟の場合には、成人患者と比較すると患者は年少で、体格も小さいために、暴力・暴言の内容が異なる可能性はあるものの、暴力・暴言を受けた経験のある看護師の割合はとても高いです。

暴力に対する反応

暴力の被害にあった者は、暴力そのものによる身体的受傷のほかに、短期あるいは長期にわたる心理的トラウマ、仕事に戻ることへの恐怖、同僚や家族との関係の変化、無能力感・罪責感・無力感、上司や管理者から批判されることへの恐怖などを感じることが指摘されています。さらに、「傷ついた自分自身の心身の痛みをどうケアするか」に関する困難、「暴力・暴言を受けた際に不適切なケアをしたかのような評価を受けた」、「暴力・暴言に対する心理的サポートがない」といった負担が挙げられています。

暴力防止対策として推奨されていること

米国労働安全衛生局のガイドライン によると、暴力防止プログラムとして、以下のことが最低限必要であることが述べられています。

  •  暴力・暴言を絶対に許さない(ゼロ・トレランス)方針を明確に打ち出し、組織内の職員と利用者、患者、来訪者にこの方針を周知。
  •  暴力被害にあった職員がその被害を報告しても報復を受けることがないことを確約。
  •  職員にインシデントを迅速に報告するよう促し、リスク低減のための方法を助言。
  •  職場の安全維持のための包括的計画をまとめる。法執行機関との連携なども含まれる。
  •  職員やチームが医療現場での暴力防止のための技能を身につけられるよう適切なトレーニングや資源を確保。
  •  患者・利用者へのサービスと同じくらい職員の安全を大切にする環境。
  •  安全の確保に関してや、影響を受けた職員をサポートし回復を促進するための説明などを行う。

暴力に対する看護師の心理的反応を軽減させる可能性のある事柄

暴力や暴言に対する看護師の心理的反応を左右するものとして、患児の背景を理解すること、患児の症状の特徴を理解することが指摘されています。また、暴力の加害者自身が暴力の被害者である例も多いということを医療者が認識しておくことの重要性も指摘されていました。暴力・暴言の背景にある子どもの状況を理解することで、看護師の心理的反応は異なるかもしれません。そして、暴力・暴言に遭遇した看護師自身が落ち着いたあとで、子どもの行動化の意味や背景を考え、次のケアにつなげていくことも重要でしょう。
また、暴力・暴言が起きた時のその後の対応が効果的になされたかどうかも、看護師の心理的反応を左右すると報告されていました。暴力被害を受けた後の対応(その看護師への管理者やスタッフからのサポートなど)やふりかえりを、ニーズに応じて組織的に実践しつつ、それらの取り組みを積み重ね共有していくことも、心理的反応を軽減する上で不可欠でしょう。感じたことを安心して共有できるような職場づくりも大切です。
なお、看護師が暴力や暴言に遭遇した後に生じうる反応を看護師個々人が知っておくことは、その後の自身に起きる感情を理解し、その後対処していくことに役立つ可能性があると同時に、暴力や暴言に遭遇した同僚をサポートするのに役立つでしょう。

暴力・暴言を受けた時の感情コントロール

看護師が穏やかさを保ち、自身の感情に対処することは重要です。看護師が暴力や暴言に遭遇したその場で、感情を抑えこむのではなく、自身に起きている怒りやその他の感情に気づくことで、感情をコントロールできる可能性があります。アンガーマネジメントやマインドフルネスはそのために役立つかもしれない手法です。アンガーマネジメントもマインドフルネスも、患者が身に付けるために提供されるプログラムであることが多いですが、医療職者自身がこれらを学ぶことは、暴力被害を受けた後の自身の気持ちのコントロールやメンタルヘルス向上にも有用であると共に、暴力防止につながる可能性があります。

用語解説

  • アンガーマネジメント
    怒りをコントロールすることにより、感情を落ち着かせるとともに、怒りとともに生じる生理的反応を低減する。アンガーマネジメントの手法として、認知行動療法が用いられる事が多いが、リラクセーション法や、実際にその場にある問題を解決する、コミュニケーションを改善するなども怒りの低減に用いられている。
  • マインドフルネス
    仏教瞑想の心と呼ばれている。自分の内なる声、心の声を聞き、呼吸に耳を傾ける瞑想である。意図的に、判断をせずに、その瞬間に注意を払うことにより、この瞬間に存在する現実に対してより大きな気づき、明晰さ、受容が育まれる(Kabat-Zinn, 1994)。
    マインドフルネスを用いた治療、例えばマインドフルネスストレス低減法(Mindfulness-based stress reduction: MBSR)は現代の心理療法で着目され、その効果の報告も増えている。

関連ウェブサイト

  • 保健医療福祉施設における暴力対策指針(日本看護協会) nurse.or.jp/…/bouryokusisin.pdf
  • 医療従事者のためめの医療安全対策マニュアル(日本医師会) med.or.jp/…/menu.html
  • 医療及び社会サービス従事者に対する職場暴力防止ガイドライン(米国労働安全衛生局) osha.gov/…/osha3148.html
  • 保健医療部門の職場内暴力対策枠組みガイドライン(国際労働機関(ILO)、国際看護師協会(ICN)、世界保健機関(WHO)、国際公務労連(PSI)) ilo.org/…/index.htm
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