どこまで家族の問題に踏み込んでも良いのですか?

看護師が子どもの家族の支援について感じる主な疑問は、家族への介入の必要性、介入の程度、介入の方法といったものです。家族の問題にどこまで踏み込めば良いのかはケースごとに異なる場合が多く判断が難しいものです。まずは、家族の意味や位置づけについて考えておく必要があります。また、どの程度家族に踏み込んで介入をするかを判断するためにも、家族機能や養育状況のアセスメントの視点を理解しておくことが重要です。これらの理解と合わせて、どの様な家族の場合には看護師が介入し、どの様な家族の場合には他職種や他機関に家族の介入を委ねるのかを判断をする力を身につけておくことも大切です。

1. 子どもを第一義に考える

児童・思春期精神科の治療で、第一に優先すべきは、子どもの権利や治療です。入院治療では、病棟が生活の場になり、看護師たちは子どもの将来や人生を背負っているといえます。目指すところは、子どもがいかに良く生きることができるかということです。子どもへのケアを考える際に、子どもと親の利害がぶつかる時には、看護師は何よりも子どもを中心に考え、常に子どもをサポートする側の立場にあることを忘れてはならないでしょう。

2. 子どもの治療に対する家族の協力の意思はどの程度か

家族自体が状況の変化を望んで子どもを入院させているケースは、家族が子どもをサポートできる可能性が高く、その場合には協力を得ることは十分に可能です。一方、児童相談所から措置入院してくる被虐待児のケースなど、家族の協力が得づらい場合もあります。そのため、誰が入院に繋げ、誰が困っているのかについて明らかにしておくことは、子どもを看護する上で重要です。

3. 様々な情報をもとに家族機能をアセスメントする

家族への介入の程度を判断するためには、養育状況、家族機能、子どもを取り巻く環境についてアセスメントする必要があります。まず、これまでの養育状況を家族に直接聞いていくことから始めることが重要であり、多くの家族員に聞けると、より広い視野で家族を捉えることができます。家族構成や家族歴などを聞きながら、これまでの関わり方を具体的に聞くと良いでしょう。また、児童相談所の担当者や学校の教師から養育環境の実際や、地域の中での家族像に関する情報を得ることも、家族機能をアセスメントする上での重要な手がかりとなります。

4. 家族支援への反応をアセスメントする

  • 家族を支援すると、子どもの問題も解決する場合がある
    子どもの入院中は、外出や外泊などで少なからず家族の協力が必要です。入院中に上手くいった過ごし方や、関わり方を家族に伝え、外出や外泊中に実践してもらうことで、子どもの状態が大幅に改善することがあります。家族の準備状況を見極めながらタイミング良くアドバイスすることが大切です。看護師が支持的な態度で寄り添い、訴えを傾聴し、今までの子育てをねぎらうだけでも、親の行動は変容します。面会時や外泊時になるべく家族と多く接触し、子どもの様子を伝えたり、ねぎらいの言葉をかけたりすると良いでしょう。
  • 長期外泊をしてみて、その反応をアセスメントする
    退院後の地域支援サービスを導入した上で、退院を念頭においた長期外泊を実施し、子どもと家族の反応や家族機能を再度アセスメントしてみましょう。実際の地域支援サービスを導入した長期外泊の段階になって、ようやく家族の抱える問題の大きさが明確になり、退院後の子どもの生活環境について再調整せざるを得ない場合も少なくありません。

5. 家族の抱える問題と子どもの自立する力とのバランスをみる

家族支援を実施しても、行動変容が難しい家族もあります。しかし、子どもにある程度の生活力があれば、養育能力が十分ではない家庭であっても、何とかその家族の中で暮らしていけるような援助を行うことも検討します。家族の問題が大きい場合には、その家族の問題を修復するよりも、子どもに自力で問題を乗り越える力を身につけてもらい、親から自立していく道を探る方が有効です。

6. 家族が精神的な問題を抱えている場合や、虐待がある場合には親のケアを他者に委ねる

精神的な問題を抱えている家族や虐待がある家族などの場合は、看護師が家族に介入することは控え、他職種や他機関に家族のケアを委ねていく判断も必要です。家族が統合失調症や人格障害などの精神疾患を抱えている可能性がある場合には、他の支援者や他機関が家族へのケアを提供するよう調整することが望ましいでしょう。担当看護師が家族と子どもの問題の全てを抱えるのは物理的に難しく、子どもの治療にもマイナスの影響を及ぼす可能性もあります。

  • 子どもの担当ではない看護師に家族のケアを委ねる
    受け持ち看護師以外の病棟看護師が窓口となり、家族の話を聞くことも可能です。
  • 病棟のケースワーカーに家族のケアを委ねる
    社会資源の調整や処遇に関する相談で家族と接する機会が多いため、家族のケアをケースワーカーに依頼することも可能でしょう。
  • 家族に精神科医を紹介し、家族の主治医に家族のケアを委ねる
    家族に精神疾患や虐待の問題がある時には、家族自身は子どもとは別の主治医からケアを受ける方が良いでしょう。
  • 児童相談所に家族のケアを委ねる
    児童相談所が関与しているケースでは、家族の対応を児童相談所のスタッフに担ってもらうことも可能です。児童相談所の働きかけによって家族が変化し、母子関係の再構築に繋がるケースもあります。
  • カウンセリングに家族のケアを委ねる
    実際に家族への精神的なケアが必要であれば、家族にカウンセリングを受けることを勧めると良いでしょう。

7. 家族に変化がみられない場合は、施設を退院先に考える

残念ながら家族支援を実施しても家族に変化がみられず、やはり親と離れたほう
が子どもにとって有益であると判断した場合は、退院先として児童養護施設や知的障害児施設などを検討し、児童相談所と入所に向けた話し合いを始めます。子どもが力をつけるまでは家族以外の安心できる場所で育ちを保障してもらいます。施設に入所となった場合は、看護師が作りあげた子どもとの関係性を、施設の職員に移行していけるよう配慮していくと良いでしょう。

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