児童・思春期精神科病棟における看護師の実践能力に関する実態調査の結果を公開しました

平成26年度 岡三加藤文化振興財団研究助成「児童・思春期精神科病棟における看護師の実践能力に関する実態調査」報告書を掲載しています。報告書は、自由にダウンロードして頂くことができます。ご覧頂き、コメントをお寄せ下さいますと大変うれしいです。

この調査は、児童・思春期精神科病棟に勤務する看護師の看護実践能力とその関連要因を明らかにすることを目的に、全国児童青年精神科治療施設協議会(全児協)に所属する病院の児童または思春期を対象とした専門病棟に勤務する看護師を対象にアンケート調査を行いました。そして、看護師の看護実践能力について、看護経験、看護ガイドラインの活用状況、医療事故などとの関連を調べました。

  • 平成22 年に行った同様の調査と比べると、児童・思春期精神科病棟が1.5倍以上に増えており、病棟の増加に伴い、児童・思春期精神科での勤務経験が浅い看護師が増えていることがわかりました。看護実践能力と看護経験が関連していることを考えると、児童・思春期精神科病棟での看護経験が少ない看護師への教育はとても重要です。平成25年にこのホームページ上に公開した「児童・思春期精神科病棟における看護ガイドライン」は、児童・思春期精神科病棟での看護における基本的な事項を初学者が自ら学び看護を実践する時の指針として初学者に活用頂けると思います。一方で、経験が豊富な看護師がさらに看護実践能力を向上させるためのツールの開発が求
    められています。
  • また、看護師の実践能力が、医療事故の発生に影響していることがデータで示されました。高い看護技術を身につけること、多様な状況発生を予測し的確な状況判断のもとでケアを実施すること、効果的に情報収集すること、そして、成人の精神科病棟の勤務経験を有していたとしても油断しないことが医療事故を防止するために重要であることがわかりました。
  • 報告書には記載しなかったのですが、本研究では「看護師の患者への関わり方」についても調査しました。その結果、看護師経験が長い者と一般の小児科病棟の経験がある者は、患者(子ども)と一定の心理的距離を保とうとする傾向にあることがわかりました。また、成人の精神科病棟の経験がない者は経験がある者と比べて、患者に巻き込まれる傾向がみられました。
  • 平成25年に公表された「児童・思春期精神科病棟における看護ガイドライン」が、児童・思春期精神科看護を初めて学ぶ時や困難・迷いを感じた時に活用されている一方で、より具体的な援助方法や豊富な事例を求める意見も多くありました。今後は、ある程度経験を積んだ看護師を対象とした、より具体的で臨床事例に則した発展的・応用的な資料を開発していきたいと考えています。

お忙しい中、調査にご協力下さいました看護師の教員の皆さまに心から感謝申し上げます。