子どものこころを育むケア~児童・思春期精神科看護の技~

『子どものこころを育むケア』とは、児童・思春期精神科病棟の熟練看護師の看護実践を体系的に示したものである。『子どものこころを育むケア』は、本質的な問題に取り組むことと、治療的な信頼関係を構築することの2つで構成されている。

1.本質的な問題に取り組む

児童・思春期精神科病棟に入院中の子どもが抱える問題の解決に向けて,熟練看護師は,3つの段階的なプロセスでケアを行っていた。まず,表出されている子どもの問題行動に対処した。次に,言動の奥に隠れている本質的な問題を把握し,最後にその本質的な問題に踏み込んだ。

2.治療的な信頼関係を構築する

子どもの本質的な問題に取り組むためには,子どもと良好な関係性を構築することが不可欠となる。患者が子どもの場合,大人である看護師との関係性は,かなり特殊である。特に,児童・思春期精神科病棟に入院する子どもは,愛着(アタッチメント)の形成や表現が適切でない場合や大人に対する不信や憎悪を感じている場合も珍しくない。そこで,看護師は,子どもである患者との間で良好なアタッチメントを発展させることが求められる。

治療的な信頼関係を構築するプロセスは,4つの段階に分けられる。まず,看護師が特定の子どものアタッチメントの対象となり,次にアタッチメントを形成する。そして,そのアタッチメントを他のスタッフへと拡大させる。最後に,普段から子どものアタッチメント対象を引き受けられるように準備しておく。治療的な信頼関係を構築するために,看護師は,子どもに対する自分の愛着の深まりと,子どもとの心的距離との間で適当なバランスをとる必要がある。

船越明子. (2020). 子どものこころを育むケア~児童・思春期精神科看護の技~(pp.20-22). 精神看護出版.より


詳細は、『子どものこころを育むケア~児童・思春期精神科看護の技~』(精神看護出版、2020) をお読みください。臨床現場についての語りを中心に、ベテラン看護師の技を分かりやすく描いています。