はじめに

 近年、子どものメンタルヘルスに対するケアの重要性が指摘されています。そして、児童または思春期の子どものこころを対象とした児童・思春期精神科病棟での看護も注目されてきました。児童・思春期精神科病棟での入院治療においては、看護師は子どもの生活全般に関わり、きわめて重要で中心的な役割を担っています。しかし、子どものこころの治療を行う児童・思春期精神科病棟での看護実践に対する研究は数も少なく、エビデンスも整理されていないのが現状です。

 そこで、3カ年をかけて、児童・思春期精神科病棟に入院中の子どもに対して、エビデンスに基づいた効果的な看護ケアを提供するための看護ガイドラインを開発しました。児童・思春期精神科病棟に勤務している看護師に対するアンケート調査から得られた看護ケア実施時の疑問点に対して、文献の整理と豊富な経験を有する専門職へのヒアリング調査の結果をもとに回答を作成しました。

 ガイドラインの目的は、児童・思春期精神科病棟での看護における基本的な事項を初学者が自ら学び、看護を実践する時の指針を提供することです。そのため、特定の疾患名や治療法についてはあまり言及せず、児童・思春期精神科病棟での看護における原則的な考え方を、エビデンスに基づいてわかりやすく記述しました。臨床教育において初学者への教育を実施する時や他職種との連携に際して看護の役割を確認する時にも役立つと思います。

 このガイドラインが、児童・思春期精神科病棟での看護の現場で広く活用され、子どもとその家族のニーズの充足をめざした質の高い看護の提供につながることを切に願っております。