児童・思春期精神科看護において、看護師は一対一の関わりを通し、子どもに「守られている」「大切にされている」といった安心感や信頼関係を育むことが期待されています。
しかし、病棟に入院している子ども全体を考えた場合、看護師が特定の子どもに対し一対一の個別的な関わりを提供することは、他の子どもへの関わりが疎かになり、不公平感が生じます。
子ども一人ひとりに公平で十分な個別的な関わりをするということは、すべての子どもに等しい時間関わったり、同じ援助をすることではなく、一人ひとりの特性やニーズに合わせ看護を提供することです。
子ども一人ひとりに、いつ、どのように、どれくらいの時間をかけてどのようなケアを行うのかケアプランを立案すること、病棟全体で個別的な関わりを行う環境を整えること、ケアプランを看護チーム全体で理解し、その他の子どもの関わりについては他の看護師が行うなど看護チーム全体で協力して行うことが望まれます。さらに、一人ひとりに個別的な関わりを行うためには、看護方式の工夫や継続的な業務改善に取り組む必要があります。
ここでは、一人ひとりに公平な関わりを提供するためにいくつかの病院で取り組んだ例を紹介します。
個別的かつどの子にも公平な関わりを提供するための取り組み
1.看護方式の工夫の例
- プライマリナーシング方式であっても、日々の看護においては、その日の担当スタッフが責任をもって対応し、必要な時にはプライマリナースがいない時でも、カンファレンスを開いてケアプランを立てます。これは、プライマリナースが勤務している日としていない日でケアの質が変わらないための工夫の一つです。
- プライマリナースの役割を、主に関係者との調整役とします。調整役であるプライマリナースは、子どもの全体の流れを把握し、他の職員や病院外の関係機関、家族も含めた子どもを取り巻く関係を把握し、面談の調整を行ったり、サマリーをまとめるなどの仕事を行い、子どもに適切なケアが行われているのかをマネジメントします。
- ケアプランの立案には、病棟の看護スタッフをグループ化し、そのグループで立案します。日々の看護においては、グループのメンバーが責任をもって行い、個別的な関わりは必要時に提供します。
- プライマリナーシングとチームナーシングを組み合わせたプライマリ・チーム方式があります。この看護方式では、プライマリナースと2名程度のメンバーナースが一つの受け持ち看護チームを構成し、複数の看護師がそれぞれ役割意識をもって子どもや家族に関わります。この方式では、経験による看護の質の差を改善し、見えにくい子どもの背景や問題の所在を理解し、看護の展開を確認し合いながら看護を提供していくことができるという利点があります。
2.勤務体制の工夫
児童・思春期精神科病棟は、夕方から夜間にかけて個別的な関わりが必要になってくるという特徴があるため、夜勤にシフトした人員配置を検討すると良いでしょう。
3.公平性への配慮
看護師のちょっとした工夫で子どもたちの公平性に配慮することができます。健康度の高い子どもや、終結期の子どもなど関わりが少なくなりがちな子どもに対し、日頃からラウンドの度にこまめに声をかけたり、時には個別の時間を長めにとるなど関わり方や関わる時間を配慮してみましょう。