子どもの看護アセスメントにおいて、子どもの感情、認知、言語的発達や、家族・学校・社会的環境など、様々な視点から生物心理社会学的なアプローチで、全体像を捉えましょう。このアセスメントの最初の目標は、子どもとその家族の反応のパターンのホリスティックな理解を提供することです。アセスメントを行う際は、収集したデータを、行動・感情・認知それぞれのパターンの分析を行い、それらを体系化することにより問題点を構成し、懸念される人間の反応パターンの定義付けを行っていきます。
アセスメントのための情報収集の手段
1)子どもに面接や質問を行う
まずは子ども本人に一対一で話を聞く必要があります。特に思春期の場合は、親から先に話を聞いてしまうと、子どもは看護師が子どもの視点での話に興味を持っておらず、親側の立場の人であると考えてしまうことがあります。また、子ども扱いをせず、一人の個人として尊重して話を聞くことも大切です。
2) 子どもと一緒に過ごす
一緒に遊んだり体験をしたりして、同じ場で共に時間を過ごす中から会話や観察を行い、情報を収集していきます。また、遊びや体験の中での関わりを通して、ケアに繋がる信頼関係を築いていきます。
3) 家族から話を聞く・家族との様子を観察する
両親だけでなく、他の家族や養育者とも面接を行い、子どもや養育環境についての話を聞きます。特に生育歴・家族歴は、時系列に情報をまとめると良いでしょう。そして、継続的に家族関係を観察します。
4) 幼稚園・保育園や学校の先生から情報を得る
幼稚園・保育園や学校の先生からは、集団生活での状況、友人関係など家庭以外の環境での子どもの様子について情報を得ることができます。
5) 諸検査の結果の情報を得る
フィジカルアセスメントや、各種身体的・心理的検査の結果から、発達を考えた視点や疾患の症状および副作用・合併症・併存障害の視点をもって情報を収集していきます。
情報収集・分析のためのトレーニング
1) 患者・看護師関係を作るための基本的なコミュニケーション技術の習得
治療的コミュニケーション技術、治療的で効果的な非言語的コミュニケーション(動作・アイコンタクト・空間距離・相対角度・音声・沈黙や間・タッチ・相槌など)、適切なユーモアなどは、プロセスレコードやロールプレイなどを通じて習得することができます。そして子どもの理解や背景を踏まえたコミュニケーションや、緊張を緩和するための環境づくりを工夫すると良いでしょう。
2) 心理検査・心理療法の技法の活用
描画法、コラージュ療法、プレイセラピーなど、アートや遊びに関する検査や療法の技法は、子どもの観察や面接に応用できます。
3) スーパーバイズ
経験者・熟練者・看護教育者・看護学を始め、心理学・教育学・社会学・人類学などの研究者・他の医療職の助言などは効果的です。
アセスメントの内容
児童・思春期精神科の看護師が子どもの問題をホリスティックに分析するためには、下表の項目を網羅した情報を収集し、関連知識を用いて収集した情報のアセスメントを行っていくと良いでしょう。
表 児童・思春期精神科病棟での看護アセスメントに必要な情報
生物学的発達 |
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疾患の症状 (副作用・合併症・併存障害・ 二次的精神症状を含む) |
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認知・パーソナリティーの特徴 |
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文化的背景 |
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子どもの家族・学校・社会的環境 |
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用語解説
- エゴ・コンピテンシー・スキル:すべての子どもが有能な大人になるために必要とする特定のスキルのこと。看護アセスメントでは、医学的診断にかかわらず、(1)親密性と信頼関係の構築、(2)分離への対処と独立した意思決定、(3)共同での意思決定と対人葛藤への対処、(4)フラストレーションや好ましくない出来事への対処、(5)良い感情を祝うこと、喜びを感じること、(6)後の達成感のために働くこと、(7)リラックスすること、遊ぶこと、(8)言葉や記号やイメージを通じた認知処理、(9)適切な方向性と目的の感覚、の9つについてのスキルの評価が必要である。