家族と有効なコミュニケーションをとるにはどうすれば良いですか?

 児童・思春期精神科看護で家族を支援する上では、家族を責めることなく共感すること、ねぎらうことが重要です。家族とコミュニケーションを取るために、看護師が家族の話を聴く姿勢を忘れないこととそのための環境づくり、看護師同士でさまざまな見方や視点を共有し看護師同士サポートし合える環境を作ること、家族を支えるために面会時に声をかける、家庭訪問する、地域や組織で家族を支援する場を作るなどの方法が考えられます。

児童・思春期精神科患者の親や家族の思い

 児童・思春期精神科患者の家族員はどのような思いでいるのかを看護師が認識することは重要です。不安、焦燥、後悔、自責、恥、怒り、恨みなどの諸感情にとらわれ、疲労し抑うつ的となり、不眠、頭重といった身体的な不調をおぼえるようになることも少なくありません。精神科疾患を有する患者の親の心理を質的に分析した研究結果では、精神科疾患を有する患者の親は、自身の関わりを悔やむ、自分を責める、子供にどのように対応したらよいかわからない、感情的になってしまう自分がいる、などの感情を抱くことが挙げられていました。

児童・思春期精神科患者の家族員が抱える精神面での困難

 先述したような親の思いや心理、感情があることで、親が抑うつ気味になったり、不安定になりやすいことは想像に難くありません。船越らがH22(2010)年に行った調査 1) の結果、児童・思春期精神科病棟で働く看護師が家族への支援に際して困難または疑問を感じることとして、最も多かったのが『家族が精神面で問題を抱えている』(15.5%)でした。その他の報告でも、「両親のどちらかが精神疾患や何らかの発達障害、パーソナリティ障害を疑わせる例は多い」と記載されるなど、患者の家族が精神面での困難を抱えていることで、看護師が家族と関わることに難しさを感じていることが推測されました。しかしながら、先行研究では家族員の有する困難が整理されていたり、具体的な診断名として記述されていたりするわけではなかったため、精神面での困難の具体的な分類やその割合については不明です。

看護師と家族の関係で求められること

 児童・思春期の患者に関わる看護師と家族の関係で求められるのは、家族に力をつけ、患者とのつながりを切らさずに患者を支え続けることができるように家族と連携を図ることです。看護師にできる具体的なこととしては、親が自分の感情を解放できるようにしたり、親を責めずに共感すること、ねぎらうことです。また、親だけでなく、患者の兄弟姉妹や祖父母も含めて家族との関係を考えていけるとよいでしょう。

有効なコミュニケーションをとるために看護師ができること

 臨床実践の場で、家族と交流し、家族の話を聴くことの必要性を医療チーム全体が認識し、お互いに交流しやすい環境を作り上げていくことで、家族と有効なコミュニケーションが取りやすくなる可能性があります。また、家族の問題のみに焦点を当てるのではなく、家族に対する看護師の認識や感情を語り、さまざまな見方や視点を交換できるカンファレンスをもつなど、チームの中で看護師をサポートする環境づくりは重要でしょう。

家族を支える実践の成功例

 実際に行われている家族を支える実践として報告されている文献を大きく分類すると、個別事例に対して実践した支援を記述した事例報告と地域や組織全体で家族員を支援する実践の報告に分けられました。

  1. 患者家族に対するアプローチをした事例報告
     家族員を支えるために個別に行った働きかけを報告していた事例報告も多数ありました。これらで共通してあげられていたものは、看護師が家族に声をかけ、家族との面接をして家族の不安を傾聴し、家族の思いを受容し、理解することであり、その機会としては、病棟に家族が面会に来た時に声をかける、主治医と家族の面談に看護師が同席する、家族との面接の機会を看護師が設定する、家庭訪問するなどでした。
  2. 地域や組織で家族を支援
     家族員を組織として支える活動には、児童・思春期精神科に特化した支援ではなく、子育てについての学習や仲間作り、情報交換ができる場の提供、相談の場を提供する地域の活動、重度心身障害児の子どもを持つ家族と地域の専門機関で情報共有ができる共通記録様式の導入の報告がありました。また、児童・思春期患者の家族を参加対象とする親の会の活動の報告が1件ありました。

このような、地域や組織で家族を支援する活動を行う中で、家族と看護師のより良い関係性、コミュニケーションについて互いに考える機会ができる可能性があります。

1) 平成22調査結果)平成22年度科学研究費補助金 若手(B) 児童・思春期精神科病棟における看護ガイドラインの開発 調査結果のお知らせ(研究代表者:船越明子).

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