熟練支援者は、本人が生きづらさを受け入れられ、安心できる場を訪問の中で作っていきました。特定の支援者との継続的なコミュニケーションは、自分にもできることがあるかもしれないという希望を本人にもたらします。家族支援も並行しながら、本人のニーズに合わせた支援を考えていました。
次の訪問の同意を本人から得る
初回訪問時に次の訪問の具体的な日時やおおよその訪問間隔、訪問時間を本人と一緒に決めることになります。支援者は、ひきこもり支援が目的であることを本人に伝え、本人から明確な訪問拒否の意思表示がなければ、次の訪問への同意が得られたものと考えていました。初回訪問時から、家族に退席を促すなど、支援者は本人と二人になれる時間を意図的に作っていました。訪問の対象はあくまで本人であって、家族ではないことを本人に理解してもらうのがねらいです。
安心できる場をつくる
訪問時には、就労や就学などひきこもりに関することを支援者から話題にすることはなく、本人が興味をもつこと、趣味の話、世間話などたわいもない話をしていました。支援者自身も、本人との会話を楽しみ、支援者自身の趣味や最近の出来事を話すようにしていました。本人と共通の話題があったり年齢が近かったりなど本人にとって安心できる場を作ることができる支援者が訪問を担当するように工夫しているところもありました。
本人の生きづらさを受け止める
訪問開始から間もなくして、幼少期のトラウマ、ひきこもりのきっかけとなる過去のつらい経験、現在の悩みを打ち明けられることは少なくありません。支援者は、このようなネガティブな思いを掘り下げて聞いたり、解決を図ったりするのではなく、むしろ、本人の思いを受け止めつつも、深く聞き過ぎないように気を付けていました。
本人のニーズに合わせて支援の方向性を再設定する
訪問支援をすることで得られた、本人の生活状況や趣味、精神疾患罹患の可能性等についての新しい情報をもとに、支援者は、本人のニーズに基づいて支援の方向性を再設定していました。家族と本人のニーズが異なる場合も珍しくないため、支援対象をあくまで本人とし、本人のニーズを大切にする必要があります。支援チームでニーズと支援の方向性を検討しているところもありました。
キーパーソンとしての家族を支える
家族相談は、通常、訪問ではなく来所で行われます。家族がキーパーソンとしての役割を担えるよう、訪問時の様子を伝えたり、家族の不安を傾聴したりしていました。