ひきこもる人が訪問支援を受けてから自分らしい働き方を見出すまでの心理的変化

この章では、支援を受ける側の視点に立って訪問支援の意義を考えてみます。過去に訪問支援を受け、現在は就労中のひきこもり経験者3名にインタビュー調査を行い、長期にひきこもる人が、訪問支援を受けることによって自分らしい働き方を見出すまでの心理的変化の様相を分析しました(下図)。

自力での変化は望めないと諦めていたひきこもる人は、恐怖感がありながらも、家族が以前から相談に通う支援機関からの訪問支援であることが後押しして、不安の中で訪問を受諾していました。そして、訪問支援の開始後も、恐怖心から行動に移せない日々が続きましたが、伴走してくれる訪問支援者の支えを通して、人に頼ってはいけないなどの自らのこだわりを捨てることで変化への道を歩むことを決断していました。困難なことに遭遇しても、元には戻りたくないという強い気持ちがあり、家から外への生活へと活動範囲の拡大や支援機関で知り合う仲間との交流によって、社会的存在としての自分感覚を得ることができ、さらに等身大の働き方を見出すなど現状の自分を受け入れるようになっていきました。このプロセスには、自立度に沿って伴走してくれる支援者たちの存在がありました。

ひきこもる人にとって、信頼できる家族がつながっている支援機関からの情報は、支援を受け入れることに対する恐怖感を踏み越える手助けになっていました。また、ひきこもり状態にある人の多くは、自力で変化することを諦めており、信頼関係が構築された支援者が伴走し、時期をみて背中を押すことが必要であると考えられます。また、ひきこもりを経験した仲間同士の交流も本人が自分を受けれることの助けとなることが分かりました。